アフタースクールラヴストーリー

「えっとね、気になり始めた頃は、自分の中に本当にこの人が好きなのかなっていう疑問があって、だけどなんか顔を見るのが恥ずかしくて……。正直自分でもよく分からなかった」
「ならどうして、横山君が好きだって気付いたの?」
「うーん……、難しい質問だなあ……。なんていうか、好きっていう気持ちにも段階があるんだよね。この人ともっと話していたい、離れたくないって感じたのが始まりで、その気持ちが段々と大きくなって、いつしか自分のことを一番に想って欲しいって思うようになるの。言葉で表すとしたら、彼にとっての『特別』になりたいって言うのかな。修平が好きだって気付いたのは、そうした気持ちが自分の中にあるって、分かったからだと思う」
「『特別』になりたい……」

私は久田先生にとっての『特別』になりたいのだろうか。
確かに先生と話している時にもっと話していたいと思うこともあったけど、それはちひろと話している時と同じ感覚で、ちひろが言ったこととは少し違う気もする。

「やっぱり、分かんないな……」

無数に罅の入ったアスファルトを見つめ、私は言う。

「まあでもこういうのってさ、すぐに答えが出るものじゃないでしょ」
「そ、そうなのかな」
「そうよ。さっきも言ったけど、私だって最初は好きかどうかはっきりしなかったし、その状態で修平と一緒にいる内に、好きだって分かったんだもん。誰かを好きかどうかなんて、すぐに分かるものじゃないし、すぐに答えを出すものでもない。気になる人と何度か接してみることで分かってくるんだよ」

柔らかな声で話すちひろ。

「けどそういうのって不安にならない? 実は違ったらどうしようとか、悩んでいる間に他の人と付き合ったらどうしようとか」
「ふふっ。美奈って意外と小心者だよね。生徒会長として前に出るときはあんなに堂々としてるのに」
「ど、どういうこと⁉」
「ごめんごめん。だってさ、私といる時と生徒会をやっている時の美奈って全然違うもん。こういうところ一回皆に見てもらいたいよ」
「む、むう……」

私は頬を膨らませ、じと目でちひろを見る。

「でもね、私にそういう一面を見せてくれるのは、私のことを信頼してくれている証だって思ってるよ」
「もう、何それ」

ちひろの一言に、膨らんだ頬が萎む。
このまま簡単に言い包められてしまうのは納得できないが、埒が明かないので私は話を進める。
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