アフタースクールラヴストーリー
「それで、結局どういうことなの?」
「割り切りが大切ってこと。そりゃあ、誰かに取られちゃうかもって焦ったことはあったよ。だけどそれ以上に怖かったのは、自分の気持ちがはっきりしないまま付き合って、後々後悔すること。付き合わなきゃよかったとか、なんで付き合ったんだろうってなったらお互いに嫌でしょ。だから私は、修平と正面から向き合って、この気持ちが本物かどうか確かめた。最終的には付き合うことになったし、当然それは嬉しいけど、もしかしたらやっぱり違ったってなったかもしれない」
堂々と臆することなく言うちひろ。
私は、彼女の持つ信念の強さを感じた。
「なんか、すごいね。そこまで割り切れちゃうなんて」
「ま、私みたいな人を冷めてるって言う人も多いけどね。私の周りでも同じ考えの人は少ないし、好きかもと思ったらぐいぐい行くっていう人もいる。私の考えが絶対正解ってわけでもないからね。でも、どんなに恥ずかしくても気になる人と正面から向き合うことは大事。美奈はそれができてる?」
「あ……」
私は一度奥歯を噛みしめる。
気になる人と正面から向き合う……、それこそ今の私に必要な全てだった。
「ちひろ」
「ん?」
「ありがとう。私、ちゃんとその人と向き合ってみる」
「うん、頑張って」
ちひろは優しく私に微笑みかける。
それに呼応して私も笑顔になる。
「ところで……」
「え?」
優しい微笑みから一転、ちひろは小悪魔のように笑う。
「美奈の気になる人って誰?」
「そ、それは……」
「教えなさい!」
ちひろは私の脇の下を擽る。
そこが私の身体の弱い部分だと知っての行動だ。
「ちょっ、やめて……。ははっ……」
「言っちゃいなさいよ。そうすれば楽になるから」
「む、無理……。これを言ったら……あひっ、……大変なことに……」
徐々に暗くなってきた空に、私の笑い声が響く。
このことを後から思い返して、私は羞恥のあまり死にたくなった。
「ちひろ、今日はありがと」
私は何とか口を割ることなく、自分の家の前までたどり着く。
ちひろは「もう少しだったのに」と言って悔しがる素振りを見せる。
「ふふふっ。じゃあまた明日」
「うん。また明日ね」
ちひろに手を振りながら、私は自分の家へと入っていく。
その姿を見届けたちひろは、玄関が完全に閉まったのを確認してから一言呟いた。
「これは、藤澤も厳しいなあ……」
すっかり暗くなった空に浮かぶ月は、意図せぬうちに雲の流れに逆らい、その場で至極当然かのように輝いていた。
「割り切りが大切ってこと。そりゃあ、誰かに取られちゃうかもって焦ったことはあったよ。だけどそれ以上に怖かったのは、自分の気持ちがはっきりしないまま付き合って、後々後悔すること。付き合わなきゃよかったとか、なんで付き合ったんだろうってなったらお互いに嫌でしょ。だから私は、修平と正面から向き合って、この気持ちが本物かどうか確かめた。最終的には付き合うことになったし、当然それは嬉しいけど、もしかしたらやっぱり違ったってなったかもしれない」
堂々と臆することなく言うちひろ。
私は、彼女の持つ信念の強さを感じた。
「なんか、すごいね。そこまで割り切れちゃうなんて」
「ま、私みたいな人を冷めてるって言う人も多いけどね。私の周りでも同じ考えの人は少ないし、好きかもと思ったらぐいぐい行くっていう人もいる。私の考えが絶対正解ってわけでもないからね。でも、どんなに恥ずかしくても気になる人と正面から向き合うことは大事。美奈はそれができてる?」
「あ……」
私は一度奥歯を噛みしめる。
気になる人と正面から向き合う……、それこそ今の私に必要な全てだった。
「ちひろ」
「ん?」
「ありがとう。私、ちゃんとその人と向き合ってみる」
「うん、頑張って」
ちひろは優しく私に微笑みかける。
それに呼応して私も笑顔になる。
「ところで……」
「え?」
優しい微笑みから一転、ちひろは小悪魔のように笑う。
「美奈の気になる人って誰?」
「そ、それは……」
「教えなさい!」
ちひろは私の脇の下を擽る。
そこが私の身体の弱い部分だと知っての行動だ。
「ちょっ、やめて……。ははっ……」
「言っちゃいなさいよ。そうすれば楽になるから」
「む、無理……。これを言ったら……あひっ、……大変なことに……」
徐々に暗くなってきた空に、私の笑い声が響く。
このことを後から思い返して、私は羞恥のあまり死にたくなった。
「ちひろ、今日はありがと」
私は何とか口を割ることなく、自分の家の前までたどり着く。
ちひろは「もう少しだったのに」と言って悔しがる素振りを見せる。
「ふふふっ。じゃあまた明日」
「うん。また明日ね」
ちひろに手を振りながら、私は自分の家へと入っていく。
その姿を見届けたちひろは、玄関が完全に閉まったのを確認してから一言呟いた。
「これは、藤澤も厳しいなあ……」
すっかり暗くなった空に浮かぶ月は、意図せぬうちに雲の流れに逆らい、その場で至極当然かのように輝いていた。