アフタースクールラヴストーリー
「こんなんじゃ駄目ですよね。林先生にも皆にも情けなくて顔向けできないです。何とか次の行事で挽回しないと……」
「違う」
「え?」
今度は僕が彼女の言葉を遮る。
自分への怒りを悟られないように、努めて平静を装う。
「違うよ、副崎は情けなくなんかない。情けないのは、僕の方だ……」
そうだ。
僕は生徒を支えなければいけない立場なのに、球技大会を成功させることばかりに気を取られ、副﨑の様子に注意を向けていなかった。
信頼しているように見せかけて、彼女たちに負担を押し付けていた。
本当に合わせる顔がないのは、僕じゃないか。
「そんな、なんで久田先生の責任になるんですか? 倒れたのは私の自己管理ができていなかったからで……」
副崎はそう言うが、このままではきっとまた同じことの繰り返しになる。
そうならないために僕にできることは……。
「なあ副﨑」
「はい」
「僕じゃ駄目かい?」
「へ?」
口を開いたまま、何度も瞬きをする副崎。
「心配事がある時に、一人で抱え込んでいては駄目だよ。今日自分一人で思いを抱え込んでやっていたんだろ。副崎が何か、他の生徒会メンバーや周りに言えないようなことで悩んでいるんだったら、これからは遠慮せずに僕を頼ってほしい。生徒会の顧問として、僕は君を支えてあげたいんだ。それとも、君の支えになるのは僕じゃ駄目かい?」
僕にできること、それは彼女の本音を受け止めて、彼女の悩みを聞き入れて、彼女の支えになること。
同時にそれは、生徒会の顧問として僕がすべきことでもあるはずだ。
「先生……」
副崎の表情が和らぐ。
「ふふっ、そんなふうに誰かに言われたの、初めてですよ。」
「え、そうなの?」
「はい。私、人に頼ることはありますけど、他人には出来るだけ弱みや悩んでいる姿を見せないようにしてきました。それもあってか今みたいに自分を頼れなんて言われたことないですよ」
副崎は唇を綻ばせ、まるで至福の時を感じているかような口ぶりで話を続ける。