アフタースクールラヴストーリー
「私、久田先生と一緒だとなんだか落ち着くんですよね」
「おお?」
「年が近いからですね。あ、でも私久田先生の年齢知らないや。ということは久田先生が子どもっぽいからですかね」
「ええ⁉」
「ほら、そうやってムキになって反応してくれるところとか、単純で子どもっぽいですし。そうしたところ見て、可愛いって感じたりしているのかもしれません」
「そんなに僕、子どもっぽいかな……」
僕は腕組みをし、口を尖らせる。
「はははっ、冗談です。いや、やっぱり冗談じゃないかも」
「どっちだよ⁉」
「切れのあるツッコミですね」
「あのさ、僕は教師なんだけど……」
散々振り回され、困り果てた表情する僕。
「ごめんなさい。けど一緒にいると落ち着くってのは本当です。だから先生になら色々と話せると思います。これから私のこと、支えてもらえますか?」
そう言った彼女の姿が保健室に差し込む夕陽と重なり、とても眩しく、輝いて見えた。
「ああ、もちろんだよ」
その輝きに心を惹かれながら、僕は彼女と約束を交わす。
「良かった。これからもよろしくお願いしますね、先生」
いつものあどけなさ一杯の笑顔で、彼女は言う。
それを見て僕は心の底から安堵する。
「じゃあ僕は行くよ。元気だったら、また明日会おう」
「はい、ありがとうございました」
もう少し副崎の傍にいてやりたかったが、予定より長居してしまったので、僕は保健室を出て職員室に戻る。
その途中、一人の男子生徒がこちらの方に歩いてくるのを見かけた。
「あれは……」
彼の名前は藤澤優。
副崎と同じクラスの子で、確か最初の授業で僕が彼女と話していた時に、こちらを凝視していた子だ。
あの後特に何もアクションがなくて気に留めていなくなっていたけど、なんだったんだろうか。
「お疲れ様」
「……どうも」
藤澤は控えめな声で挨拶する。
元々あまり話すタイプではないのかな。
「俺だったら、ちゃんと気付いていた」
「え?」
僕とすれ違う時、何やら彼が呟いた気がした。気になって振り返ったが、藤澤はこちらを見ることなく歩いていってしまう。
空耳だったかと思い、僕は再び歩き始めた。