アフタースクールラヴストーリー

誇らしげに輝く夕暮れ時の陽射しが、今の私の気持ちを照らしているようだった。
長く悶々としていた私の葛藤に今、はっきりと答えが出たのだ。

 “私は久田先生のことが好き”

先生が支えてくれるって言ってくれた時、私の心が大きく振動した。
もっとこの人と一緒にいたいと思った。
もっとこの人に近付きたいと思った。
もっとこの人のことを知りたいし、私のことも知ってほしいと思った。そして久田先生にとっての『特別』になりたいと思った。 
私は初めて、誰かのことを好きになったのだ。

自分の心臓の鼓動がいつもより速くなっているのが分かる。
その鼓動は不思議なことに、久田先生といる時よりも速い気がする。
というより、久田先生といる時はそんなこと考えていられなかった。
ふんわりとした、今までに味わったことのない感覚。
まるで別世界に飛ばされてしまったようだ。
胸がきつくと締め付けられるのに、それがなんだか心地良い。

「これが誰かに恋をする……」

声に出すと、より心臓の音が高鳴る。
これからどんな顔で久田先生と接すればいいのだろう。
そんな不安も交えながら、私は外の景色を見ていた。

数分後、誰かが保健室のドアをノックする。
その音を聞いた私は、元の世界に帰ってきたような気分になる。

待てよ。
もしも久田先生がまた入ってきたらどうしよう……。

「ど、どうぞ」

鼓動の加速が止まらない。
だが保健室に入ってきたのは久田先生ではなく、幼馴染の藤澤優君だった。

「あ、優君か。びっくりしたなあ」

私は一息つくと共に、ちょっぴり惜しい気持ちになる。

「なんでそんなびっくりするんだ。誰だと思ったんだよ?」
「い、いや、変な人だったら嫌だなって」
「誰もお前なんて襲わねえよ」
「え、なんかひどい!」
「はいはい。それより具合は、大丈夫か?」

表情は普段とそこまで変わらないが、私のことを心配してくれているのは何となく伝わってくる。
態度には出さないけれど、優君は常に他人のことを気にかけてくれる優しい人だ。
長い間一緒にいる幼馴染だからこそ、その一面を知っている。

「うん、寝たら回復した」
「それなら良かった。なあ……、さっきまで、あいつがここにいたのか? あの生徒会の顧問の」
「あいつなんて言わないの。久田先生でしょ」
「ん……」
 
優君は口を噤み、両手を組む。

< 44 / 137 >

この作品をシェア

pagetop