アフタースクールラヴストーリー

「それがどうかしたの?」

今久田先生の名前を出されるのはやめてほしいが、それを見破られないように慎重に話す。

「あいつがなんか言ったのか?」
「へ?」
「だから、あいつがお前になんか言ったのかって聞いてんの」
「えっ……。い、いや……」

先生にさっき言われたことって……、「僕が支えになる」って言う言葉? 
けど優君が知っているはずないし……

「やっぱり何かあったのか?」

優君は執拗に尋ねる。
心臓の鼓動が増し、表情も崩れそうになる。

「な、何もなかったよ。大丈夫かって声をかけられただけ」

気持ちが外に漏れないように必死に抑えながら答える私。

「そうか……」

納得してもらえたのかな……?

「あのさ、お前もしかして……」
「もしかして……?」
「やっぱりなんでもない」
「え?」
「今日この後どうするんだ。親父さんに迎えに来てもらうのか?」

何を質問しようとしたのか気になったが、私が聞き返す間もなく話題を変えられてしまった。

「もう少し休んだら自分で帰るつもり。お父さんは仕事で忙しいだろうし」
「でもまた無理して倒れたら……」
「大丈夫だよ。お父さんには迷惑かけられない。一人で頑張っているわけだしね」

本音を言うと、寂しい。
けれど迷惑をかけられないのも事実。
私は優君を心配させるため、笑顔を作って答える。

「分かった。動けるようになったら言えよ。それまで学校に残っているから」
「そんな悪いよ、折角部活がないのに待たせるなんて」
「別にいいよ。対して時間は変わらん」
「そう……。ありがとう」
「気にすんな。俺一回教室に戻って、荷物取ってくるわ」
「分かった」

優君は立ち上がり、ドアを開けて外へ出ていく。
やっぱり優君は優しい。
もし優君が私の気持ちを話したらなんて言うだろうか。
考えると胸が熱くなる。
この思いを告げるのはまだまだ先になるかな……。

手元の水筒に残ったお茶を飲みながら、私はそんなことを思っていた。
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