アフタースクールラヴストーリー

職員室に戻った僕は、副崎と藤澤の関係性について考えてみる。
授業前に二人が話しているのは何度か見かける。
人とあまり会話しなそうなタイプの藤澤が長々と話しているわけだから、ある程度の深い関係性があるのだろう。
もしや二人は付き合っているとかそういう関係なのだろうか。
しかし副崎からそういう話を聞いた覚えはない。
まあ、女子高生が男性教師にそんなこと話さないだろうが。

少時考えていると、隣の席の御手洗先生が部活動を終えて帰ってきた。

「どうしたんだい久田先生? 何か考え事をしている様だけど」
「あ、お疲れ様です」

御手洗先生は野球部の顧問だったな。
藤澤のことについて聞いてみるか。

「あの、御手洗先生、野球部に藤澤優って子がいますよね」
「えっ、藤澤ですか……」

途端に御手洗先生の顔が曇る。

「彼、何か失礼なことをしましたか?」
 
予め謝っておこうという様子の御手洗先生。

「あ、いえ。彼のことが少し気になったもので。部活をしている時はどんな感じですか?」

ほんとは結構失礼なことをされたのだけど、それは置いておこう。
御手洗先生は暫く考え、答えてくれた。

「うーん……、悪い子ではないんだけどね。どうしても我が強くて、周りから孤立しやすくて。野球に対しては真面目に取り組んでいるし、実力もあるんだけど、中々チームになじめない時期もあってね。上級生とは口論になったことも何度か」
「へえ、そうなんですか」
「うん。試合のあるプレーについて藤澤が上級生に意見して、それが発端になったり、表情の変化が少ない子だから周りに態度が良くないって言われて、そこから口論になったりもした。本人は決してそんなつもりないのは分かっているけど、どうしても上手くいかなくてね。今は上級生が抜けたってこともあるのか、前よりは周りと馴染めているよ」

しみじみとした表情を浮かべる御手洗先生。

「なるほど。では、副崎との関係性って何かご存知ですか?」
「ああ、あの二人は幼馴染だよ。親同士も知り合いだったかな。人付き合いが上手じゃない藤澤だけど、副崎には割と心を開いているんだと思う。上級生と口論になった時も、副崎が藤澤を諭してくれたおかげで大事にならずに和解したぐらいだからね」
「おお、それはすごい」
「藤澤がチームから完全に孤立しなかったのも、副崎との関係があったからかもね。こちらとしてはそういった部分で副崎には感謝しているよ」
「幼馴染か。二人が付き合っているとかって話は……?」

この質問をするのはやや引け目を感じたが、とりあえず思ったことを聞いてみる。

「それはどうかな。さすがにそこまでは分からない。一緒に帰っているところを見たことはあるけど」
「そうですか……」

残念ながら重要な疑問は解決しなかった。

「誰が付き合っているんですって?」
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