アフタースクールラヴストーリー
「昨日のニュースですか?」
「うん、あれだよ。西陸北高校の教員が同じ高校の女子生徒と付き合っていて、生徒の方から別れ話を切り出したら教員の方が怒って暴力を振るって、怪我を負わせた事件」
「そんな事件あったんですか」
西陸北高校といえば、全高と遠く離れていない位置にある高校だ。
学力のレベルはやや向こうの方が高く、この地域に住む中学生は毎年どちらに行くか迷う生徒も多い。
この学校の教員や生徒で知らない人はまずいないだろう。
「うん。昨日の夜にニュースでやっていたよ。今日の朝刊にも載っていたかな」
御手洗先生は腕組みをしながら続ける。
「はあ……。別れ話をされて暴力を振るうのもどうかと思うけど、何よりも同じ学校に通っている生徒に手を出すなんてね。生徒と教師の間で恋愛していることが知られたら、世間から白い目で見られることは分かるだろうに。その学校の評判にも関わるし。教え子と教師が付き合って結婚するという話はない話じゃないし、実際この学校にもそういう先生はいる。それでも在学中の生徒と付き合うって、普段学校がある時とかどうしているんだよ」
御手洗先生は首を数回横に振る。
僕は、何も言わずに黙り込んでいた。
「付き合っていたってことは女子生徒もその先生のことが好きだったってことよね?」
「そうなりますね。だとしたら、女子生徒も女子生徒だなあ……」
「でも恋は盲目って言うじゃない。そのくらいの年の女の子であれば、好きになったら先生にだって歯止めが利かずにアタックしてしまう子はいるわよ」
相変わらず愉快そうな山川先生。
「そういうもんですか。山川先生はどうなんです? 担任の先生を好きになったとかは」
「うーん……、どうだったかしら。学生の頃に先生を好きになるってことはなかった気がするわ。第一かっこいいと感じる先生なんていなかったもの。でも、私の友達で同じ学校の先生に告白して、お付き合いしたっていう話は聞いたことがあるわね。卒業した後の話だったけど」
「そ、その人はいつぐらいから先生のこと好きだったんですか?」
二人の間に割って入るように、僕は尋ねる。
「具体的には言っていなかったけれど、確か好きになったのは卒業してからだって言っていた気がする。付き合い始めたのも卒業から二年後くらいだったし」
「そうですか……」
「今回の事件の先生は、久田先生と同じくらいの年齢だったらしいからな。まだ若いのにもったいない」
無念そうに嘆く御手洗先生。
「久田先生も気をつけなよ。これから何があるか分からないんだから」
「ああ……、はい」
「御手洗先生もまだまだ若いわよ。結婚したばかりなんだから、久田先生以上に気を付けないと。うふふ」
「いやはや、参ったなあ」
山川先生の言葉に、御手洗先生は顔を赤くしながら照れ笑いを浮かべる。
僕はそのやりとりを見て頬が緩むが、すぐに憂いの表情に変わる。
その顔が二人に見られないように、机の時間割に目をやる振りをして隠す。
職員室に吹き込む風は生暖かく、非常に不快な感触だった。
「うん、あれだよ。西陸北高校の教員が同じ高校の女子生徒と付き合っていて、生徒の方から別れ話を切り出したら教員の方が怒って暴力を振るって、怪我を負わせた事件」
「そんな事件あったんですか」
西陸北高校といえば、全高と遠く離れていない位置にある高校だ。
学力のレベルはやや向こうの方が高く、この地域に住む中学生は毎年どちらに行くか迷う生徒も多い。
この学校の教員や生徒で知らない人はまずいないだろう。
「うん。昨日の夜にニュースでやっていたよ。今日の朝刊にも載っていたかな」
御手洗先生は腕組みをしながら続ける。
「はあ……。別れ話をされて暴力を振るうのもどうかと思うけど、何よりも同じ学校に通っている生徒に手を出すなんてね。生徒と教師の間で恋愛していることが知られたら、世間から白い目で見られることは分かるだろうに。その学校の評判にも関わるし。教え子と教師が付き合って結婚するという話はない話じゃないし、実際この学校にもそういう先生はいる。それでも在学中の生徒と付き合うって、普段学校がある時とかどうしているんだよ」
御手洗先生は首を数回横に振る。
僕は、何も言わずに黙り込んでいた。
「付き合っていたってことは女子生徒もその先生のことが好きだったってことよね?」
「そうなりますね。だとしたら、女子生徒も女子生徒だなあ……」
「でも恋は盲目って言うじゃない。そのくらいの年の女の子であれば、好きになったら先生にだって歯止めが利かずにアタックしてしまう子はいるわよ」
相変わらず愉快そうな山川先生。
「そういうもんですか。山川先生はどうなんです? 担任の先生を好きになったとかは」
「うーん……、どうだったかしら。学生の頃に先生を好きになるってことはなかった気がするわ。第一かっこいいと感じる先生なんていなかったもの。でも、私の友達で同じ学校の先生に告白して、お付き合いしたっていう話は聞いたことがあるわね。卒業した後の話だったけど」
「そ、その人はいつぐらいから先生のこと好きだったんですか?」
二人の間に割って入るように、僕は尋ねる。
「具体的には言っていなかったけれど、確か好きになったのは卒業してからだって言っていた気がする。付き合い始めたのも卒業から二年後くらいだったし」
「そうですか……」
「今回の事件の先生は、久田先生と同じくらいの年齢だったらしいからな。まだ若いのにもったいない」
無念そうに嘆く御手洗先生。
「久田先生も気をつけなよ。これから何があるか分からないんだから」
「ああ……、はい」
「御手洗先生もまだまだ若いわよ。結婚したばかりなんだから、久田先生以上に気を付けないと。うふふ」
「いやはや、参ったなあ」
山川先生の言葉に、御手洗先生は顔を赤くしながら照れ笑いを浮かべる。
僕はそのやりとりを見て頬が緩むが、すぐに憂いの表情に変わる。
その顔が二人に見られないように、机の時間割に目をやる振りをして隠す。
職員室に吹き込む風は生暖かく、非常に不快な感触だった。