アフタースクールラヴストーリー
「私は今まで、誰かを好きになったことはなかった。だから誰かを好きになるってどんなことなのか知らなかった。だけど、久田先生を好きになって、ほんの少しだけど人好きになるとどんな気持ちになるのか分かったの。その人を前にすると心がはちきれそうで、息ができなくなるくらい苦しい思いになるけれど、それがとても暖かくて、心地が良い。自然と笑顔になって、その人と一緒にいるだけで幸せな気分になる。心が満たされて、自分ももっと頑張ろうってなる。人を好きになるってすごいんだなって思ったよ。その対象が誰であったって、それは変わらないはずだよ」
美奈の目からは涙が溢れ出し、話す声も徐々に枯れていく。
「美奈……」
「それでも優君は、私がしてることがおかしいって言うの? 気持ち悪いって言うの? ……なんで⁉ 私は普通に接する中で、久田先生を好きになった。私も久田先生も普通に生活してた。生徒会の仕事も手を抜いているつもりはないし、勉強だって疎かにしてない。久田先生だってそう。生徒会の顧問として真摯に私達を支えてくれる。優君だって先生の授業受けてれば、適当にやってないって分かるでしょ。それでも、生徒が先生を好きになるのはおかしいことなの?」
「それは……」
美奈の訴えに圧倒されてしまう優。
「私は、そうやって考える方がおかしいと思う」
美奈は止まらなくなった涙の中で、最後に一番力強くそう言った。
そうして優の目を一瞬見て、全力で走り出す。
「お、おい!」
優は美奈の方へ手を伸ばしたが、その手は届かない。
彼は彼女を追いかけようとするも一歩踏み出せず、その場にしゃがみ込んでしまう。