アフタースクールラヴストーリー

放課後になると、意外なことに優君から話しかけてきた。

「美奈」
「ゆ、優君……」
「……昨日のことで話がある」

普段と変わらない表情に見えるが、どこか話し辛そうな雰囲気をしている。
だけど良かった。
私もいつ話しかけようか迷っていたところだ。

「私も話したいことがある」

私は優君の顔を真っ直ぐ見て言う。

「そうか……」

私の言葉に何かを感じたのか、優君の顔つきも変わる。

「ここじゃなんだから、場所を変えるか」

私達は屋上へと移動する。
外に出ると今にも雨が降り出しそうな空模様だったが、それを気にしている余裕は二人とも持っていなかった。

「昨日のことなんだけど……」

屋上に入ると早速、優君は話を切り出す。

「その……」

次の言葉を中々言い出せない優君。
だがどんな言葉が来ても、私の気持ちは変わらない。
唇を噛みしめて、私は優君が話すのを待つ。

「ご、ごめん」
「へ?」

優君の口から出てきたのは、私の頭にはなかった言葉だった。

「元々、あんなことを言うつもりはなかったんだ。俺もよく分かんなくて、深く考えずに声に出してしまった。本当に、ごめん……」

優君が頭を下げる。

「あ、ああ……」

私はあんぐりと口を開いたまま優君を見つめる。

「つ、つまりどういうこと?」

私は状況が把握できず、優君に説明を求める。

「お前が久田を好きだって気持ちを、否定するつもりも、おかしいなんて言うつもりもなかったんだ。ただ……」
「ただ?」
「ただ俺が、美奈があいつを好きだっていうことに納得できなかった。俺自身が嫌だったんだよ。それでカッとなって、心にもないことをお前に言ってしまった。自分のことしか考えてなかったんだ……」

申し訳なさそうに説明する優君。

「嫌だった……。私が久田先生を好きになることを? なんで?」

ますます私は話が分からなくなった。
気になって更に質問していく。

「なんでって、それは……」

優君の表情に、焦りの色が見られる。
ここまで動揺する優君は久しぶりだ。
もしかしたら見たことないかもしれない。

「お前には、関係ねえよ……」

優君はそう言うと後ろを向いてしまい、教室に戻ろうとする。

「あ、ちょっと」

私は優君の腕を掴んで引き留める。
何故私が久田先生のことを好きなのが嫌だったのかは気になるが、それよりも言っておかなければいけないことがある。
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