アフタースクールラヴストーリー

「では僕らはこれで。ありがとうございました」

石動と斎藤がお辞儀をし、駅の中へ入っていく。

買い出しの帰り道、僕は生徒会メンバーそれぞれを降ろす場所まで送る。
電車通学の石動と斎藤は家まで距離があるため、待ち合わせ場所の駅まで乗せていった。
平沢と副崎は家が学校から遠くないところにあり、自宅まで送っていくこととなった。

「えーっと、ここの角を右に曲がって……、あ、そこです。そこの駐車場で降ろしてもらえますか?」
「ここでいいかな?」
「はい。ありがとうございます」

車を止めて平沢を降ろし、残るは副﨑一人となった。

「よし、最後は副崎の家だな」
「あ、はい。お願いします……」

僕は再び車を走らす。

「次の交差点を左です」
「うん、分かった」

この言葉を最後にお互い黙ってしまい、車内に沈黙が流れる。
よく考えたら僕は、私服姿の女子高生と二人きりで車内にいるのか。
助手席に女の子を乗せるなんて久しぶりだし、少しばかり緊張する。
副崎は他のメンバーがいる間もそんなに話さず、今も静かに席に座っている。
今日は疲れてしまったのだろうか。

車の時計は、十七時過ぎを示している。
外は明るさが残っており、完全に日の入りにはまだ早いといった感じだ。

「そ、副崎の家は門限とかないの?」

僕は車内の空気を変えるべく、思いつくままに質問をしてみる。

「え?」
「あ、いや、斎藤があまり遅くならないようにしないといけないって話をしていたからさ、副崎にもそういうのあるのかなと思って」
「ああ……、ないですよ」
「そっかそっか」
「どうせお父さん、帰ってくるの遅いですし。今も家には誰もいませんよ」
「えっ? それって……」

僕は横目で副崎を見る。
彼女の顔は酷く憂鬱そうだった。

「私の家、父子家庭なんです。私が中学生の時に、母は病死しました」
「そ、そうだったんだ。ごめんね、辛い話を思い出させてしまって」
「いえ、いいんです。もう五年も前ですし、生徒会のメンバーや周りの人は皆知っていますから。それで今はお父さんと二人で暮らしています。お母さんがいなくなってから、お父さんは仕事に異常に打ち込むようになりました。それでいつも、帰りが遅いんです」

副崎は淡々と話しているが、憂鬱そうな表情は変わらず、どこか悲しさも帯びているようにも見える。

「家事とかはどうしているの?」
「二人で役割分担してやっています。私が夕食を作って、代わりにお父さんが朝食を作る。洗濯とかはその時のタイミングで、気付いた方やできる方がやります」
「夕食は副崎が作るんだ」
「はい。だから料理には自信がありますよ」

こちらを向き、副崎はほんのりと笑みを浮かべる。

「そうなのか……」

再び訪れる沈黙。
気が付くと、副崎の家の近くまで来ていた。
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