アフタースクールラヴストーリー
「ここでいいかな。悪いな副﨑、色々と聞いちゃって」
車を止めて言った僕の言葉には反応せず、副崎は表情を変えずに固まっている。
「どうした副﨑?」
「帰りたくないです……」
口からひとりでに零れたかのように、副崎が呟く。
「え?」
「もうちょっとだけ、先生といたい……」
外ではようやく、夕陽が沈み始める。
この時僕は、副崎の言葉が何を意味するものなのか分からなかった。
「ど、どうしたんだ副﨑」
「へっ?」
副崎も自分が何を言ったのか、はっきりと理解できていないようだ。
「私、いきなり何を言って……。すみません、疲れて頭が回ってないみたいです。今の言葉は忘れてください。あはは……」
副崎の笑い声が心からのものでないことはすぐに分かった。
彼女は必死に、自分の気持ちを取り繕おうとしている。
「じゃ、じゃあ私、帰りますね。今日はありがとうございました」
「副﨑……」
逃げるように帰ろうとする副﨑。
車のドアが開き、彼女は左足を外に出す。
「副﨑!」
僕は咄嗟に副﨑の右腕を掴み、こちらに引き寄せた。
彼女の荒くなっていく息遣いが、僕の鼓膜を揺らす。