アフタースクールラヴストーリー
「先生、あの子は?」
「あ、えっと……。僕今の学校で、生徒会の顧問をしているんだ。それで、あの子は生徒会長。色々あって今日は二人で来ているんだけど……」
僕の中に動揺が走り、しどろもどろになる。
これは良くない状況じゃないだろうか。
「そうですか。どうせ先生のことだから、あの子に何か頼まれて断り切れなかったんですよね。ちゃんと分かっていますよ」
悟ったように笑う呉葉。
「あはは……」
「ほんとにそういうところ変わってないですね。けど、そこが先生の良いところなんだと思います」
「ど、どうも……」
僕は苦笑いするしかない。
「でも先生……」
呉葉の表情が微かに暗くなる。
「彼女の言葉には、きちんと向き合ってあげて下さいね」
その言葉は、呉葉自身を哀れんだようにも聞こえ、副崎を哀れんでいるようにも聞こえた。
それだけじゃない。その哀れみは、僕に対しても向けられていたようにも思える。
「分かったよ。ありがとう」
様々な言葉が頭の中に浮かんだが、僕にはこれしか言うことが出来なかった。
「それじゃあ私はこれで。またどこかで会えたらいいですね」
笑顔で手を振り、呉葉はこの場から離れる。
彼女が向かった先には、恋人と思われる一人の男性が立っていた。
呉葉は男性と手を繋ぎ、僕らとは反対方向に歩いて行く。
ちょうどそこへ、副崎が僕の元へと帰ってきた。
「先生、ごめんなさい。探していたら時間が掛かっちゃって」
「気にしなくていいよ。おかえり」
「……あの、さっきの人って……?」
「ああ、前勤めていた学校の教え子だよ」
「へえ、そうなんですか。良かった……」
「良かった?」
「いえ、何でもないです」
「そう? じゃあ次の場所に行こうか」
「はい」
副崎は嬉しそうな笑顔で返事をする。
僕らは、西館へと繋がる連絡通路の中に入っていった。