鈍色、のちに天色




お母さんに見送られ、あたしたちは出発した。



向かったのはバス停。


久しぶりのバス。



極力、バスや電車には乗らないように心がけてきた。



理由は……


「今、スロープを用意しますね」




そう、スロープを用意してもらわなきゃ、乗り降りできないから。



運転手さんは笑顔で対応してくれるけど、乗客は違う。



興味津々に見てくるか、迷惑そうな顔をするかのどちらか。



その視線が嫌で、苦痛で、仕方なかったから。



でもせっかく陽希が誘ってくれたんだもん。


あたしが嫌そうな顔をしてたらダメだよね。




「あたし、水族館なんて久しぶりなんだよね」


「俺も俺も! 小学校の遠足以来かなー?」




バスの中、あたしは何ともないような顔で、陽希との会話に花を咲かせた。



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