鈍色、のちに天色




「僕は、楓南ちゃんの望むようにしようと思った。だけどね、これからのことも考えて、決めたよ」



「なんですか……?」



「やっぱり、親にだけでも言っておいたほうがいいと思うんだ。……はい、これ。ご両親に渡してくれないかな?」




そう言って渡された1枚の紙。



"リハビリ申請用紙"だった。



ドクン、と心臓が鳴った。



紙と一緒にクリップで止めてあるメモ用紙。



『楓南さんのケガの程度だと頑張れば治るので、リハビリをすることをお勧めします』



そう、手書きで書かれていた。



先生が今まで悩んでいたのは知っていた。



たくさん頭を悩ませた末の、決断だろう。



でもね、困るよ。こういうことされると。



最近ただでさえ本当の自分が出てくるのを、必死で抑えているっていうのに。



"走りたい"

そう思わないように心掛けているのに。



その努力が、無駄になっちゃうじゃん。



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