鈍色、のちに天色




「……あたしには必要ないです」



「そんなこと言わないで、お願いだから受け取るだけ受け取って」



「でも……」




断ろうと思ったけど、たくさん考えてくれた先生の努力が無駄になるから、しぶしぶ「わかりました」と頷いた。



診察室を出たあたしは、大きなため息を吐いた。



そして、今は見たくないというように、紙をカバンの中に突っ込んだ。



だけどそれはあんまり意味がなかった。



紙を見なくたって、頭に浮かぶのはリハビリのこと。



リハビリをしたら治るって知ったら、お母さんたちはリハビリをさせるだろうな……。



それならいっそのこと、お母さんたちに渡さないでおこうか。



いや、でも。

あたし、本当は……



って、ダメダメ。そんなこと考えちゃ。



そうだよ、これからも変わらず、誰にも言わなければいいんだよ。



あたし1人で、隠していけばいい。



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