鈍色、のちに天色
「……ごめん、楓南の言う通りだよ。綺麗事押し付けて、きっとそれは俺の自己満でしかないんだよな。わかってる。でも聞き流してくれていいから、俺は楓南に正直でいたい」
下げた頭を上げた陽希と視線が交わる。
「俺は、楓南の走っている姿が好きなんだ。中学のときその走りに惚れて、憧れて……毎日毎日練習してたくらいだ」
「うん……」
「あのときの楓南の顔は忘れられない。心から、仲間と駅伝が大好きって顔。あれは偽りなんかじゃなかった。
俺はまた、あの笑顔を見たい。だからもう1度、走ってほしい」
陽希……。
うん、陽希があたしに憧れていた、ということは聞いていた。
また走ってほしいっていうのも、わかっていた。
自分がもう1度見たい、というだけじゃなくて、あたしの心からの笑顔が見たいって、そう思ってくれている。
だけどそんなにも思いが強かったなんて、思っていなかった。
痛いほど、思いが伝わる……だからこそ苦しいよ。
嬉しさと悲しさが入り交じり、複雑な気持ちになる。