鈍色、のちに天色
「家族だって友達だって、楓南の心からの笑顔が見たいはず。それは楓南が1番わかってることだろ? みんな、離れていかない。離れていくわけない……!」
陽希の言葉は深く優しく突き刺さり、胸に温もりが広がっていく。
あの日助けてくれて、あたしたち家族の仲裁に入ってくれて。
駅伝のコーチを任せてくれて、仲良くしてくれて。
あたし、それだけで十分嬉しかったのに。
なのに、もっともっと欲張りになって、あたしもずっと陽希の傍にいたいって思っちゃうじゃん。
でも……
その言葉に、甘えたい。
信じたいよ。
あたしはゆっくり小指を差し出し、そしてそれはいつの間にか絡んでいた。
その瞬間、嬉しそうな顔をする陽希が、視界に入った。
「……約束、だからね」
「え?」
「あたしの前からいなくなったら、許さないから……!」
「はは、うん。絶対にいなくならない」
触れているのは小指だけなのに、なぜか全身が熱くなる。