鈍色、のちに天色
*
「か、楓南。ほんとーに大丈夫か?」
「大丈夫だって」
「本当に、本当?」
「本当だってば。陽希ったらしつこい!」
「うぅ〜ん、だってさぁ……」
心配する陽希を横目に、あたしはさっさと車椅子を動かす。
カバンの中には、"あの紙"が入っている。
リハビリしたら治ることを黙っていたこと、お父さんやお母さんにこっぴどく怒られた。
でもそれ以上に泣くほど嬉しがっていて、あたしも嬉しくなった。
お父さんにサインをしてもらい、これから病院に出しに行くところ。
その付き添いに、なぜか陽希が来る、という……
いや、なんで?
なんで陽希が付き添い?
ま、まあ心配してくれてるってことはわかるんだけどさ。
さっきから大丈夫かどうかを、しつこいくらいに聞いてくる。
それに大丈夫だと答える。
自分でも、何が大丈夫なのかわからないけど。