鈍色、のちに天色
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「あれ、忘れちまったか……っ?」
焦ったようにカバンを漁る君。
そして困ったように辺りを見回す君に、安全ピンを差し出した。
「あのっ、これよかったら使ってください」
「えっ、と……」
「安全ピンがないんですよね? だったら、あたしの使ってください」
「いいん、ですか?」
「はい、大丈夫です。あたしの試合、もう終わったので」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
少し緊張している君が、安全ピンを受け取る。
「試合、頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます、絶対返します……っ!」
安全ピンを握りしめ、君は走り去っていった。
太陽の下を駆け抜けるその姿は、とても眩しかった。
あたしは君の後ろ姿が見えなくなるまで、微笑んで手を振って見送った。
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