鈍色、のちに天色
「思い、出した……」
いつの間にか忘れてしまっていた記憶。
あのあとに起こった事故の印象が強すぎて、薄れてしまっていたんだ。
あたしたち、話したことあったんだね。
安全ピン、貸していたんだね……。
あたしが大会で姿を見せなくなって、返せなかったというわけか。
そして陽希は、それを今までずっと持っていてくれてたんだね。
昔陽希と会っていたという嬉しさと、それを忘れてしまっていた申し訳なさが混ざり合う。
「ずっと心配してたんだ。だからまた会えたとき、すげー嬉しかった」
「陽希……」
「楓南が何かを抱えてるのがわかってたから、絶対に助けようって決めてたんだ。再会する前は、俺は何もできなかったから」
そんな思いがあったの?
再会する前って、そんなときのことまで考えて……。
「俺は今まで、楓南を助けてきたつもりだ。傷つけたこともあったけど。それでも、少しでも支えになれてた……?」
「っ……そんなの、当たり前だよ!」
あたしは起き上がり、陽希に向かってそう言った。