鈍色、のちに天色
「楓南ーっ!」
名前を呼ばれて振り返る。
あたしから少し離れたところで止まり、真剣な顔をしている陽希がいた。
あれ、着替えに行ったんじゃ……。
そんな真剣な顔をして、どうしたんだろう?
「俺、頑張るから! 最後の大会、全力を出し切って目標の場所を目指すから! それで……っ!」
ひと息置いて、再び口を開いた。
「全国大会に出ることができたら、伝えたいことがあるんだ!」
ドキッと心臓が音を立てた。
伝えたいこと……?
それってもしかして──
ううん、今は考えないようにする。
それよりも、あたしはできることをしなくちゃ。
全力で頑張る君に、全力のエールを。
「……うんっ。精一杯、応援するよ!」
そう答えると、陽希は嬉しそうにニカッと笑った。
少し顔が赤いのは、夕陽のせい?
夕陽が照らすオレンジの中、あたしは陽希の勝利を祈った。
まさかその数日後、あの悪夢が繰り返されるなんて、思いもしなかった。