鈍色、のちに天色
2限目の古典の時間。
「この和歌は、平安時代に作られたもので───」
教壇の上で行ったり来たりする先生を横目に、斜め前の陽希の席を見つめた。
10時になった今でも、陽希はまだ来ていない。
それにさっきの休み時間にあっちゃん先生に聞いたけど、まだわからないって言われた。
LINEでも
『どうしたの? 今日休み?』
って送ったけど、既読すらつかない。
一体、どうなってるんだろう?
すごく心配……。
すると、廊下からバタバタと駆ける足音が聞こえたと思ったら、急に教室のドアが開かれた。
髪が乱れ、息を切らしているあっちゃん先生。
生徒と古典の先生は、突然のことに目を開く。
「ど、どうしたんですか? 今は授業中で……」
「すいませんっ、急ぎの事で」
そう言って、あっちゃん先生は一直線にあたしに向かってきた。
なに? 嫌な予感がする……。