鈍色、のちに天色
駅伝のレースが始まった。
バトンが渡っていき、アンカーの人に渡された。
僅差で受け渡しがあった、うちの中学と北中学。
でも、北中学のアンカーは例の上野 楓南。
どんどん差を広げていく。
「あー……離されてきちゃったな。頑張れー」
隣の海斗がうちの中学を応援するが、俺は上野 楓南の走りに魅了されていた。
綺麗なフォーム、リズムよく動く手足。
風のように駆け抜けていく。
誰も寄せつけない、でもみんなを魅了する、そんな走りだった。
心臓を掴まれたような、そんな感覚。
俺はそれを見て、ドキドキと心臓が鳴るのを感じた。
最初はその鼓動の音に違和感しか感じていなかったけど、1着でゴールした彼女を見て確信した。
仲間に囲まれ、満面の笑みを見せる彼女。
嬉しそうで楽しそうで、駅伝が大好きって顔。
「陽希? おーい、陽希? どうかした?」
「やべえ、俺……」
惚れちゃったかも、上野 楓南に。