鈍色、のちに天色
今までの楓南との思い出が走馬灯のように駆け巡り、それが終わったとき、俺は目を開けた。
暗闇の中、1人漂っている。
どこだ? ここは。
なんで俺、こんなところに……。
……そうだ、俺事故に遭ったんだ。
どんくらいのケガなんだろうか?
もう走れないくらいか? それとももっとひどい?
……楓南。
楓南は、悲しんでないか?
会いたい、楓南に会いたい。
そう願ったとき、どこからか声が聞こえた。
『陽希っ……陽希!』
俺の名前を呼ぶこの声は、楓南か?
『お願い、目を覚まして! 約束したじゃん、俺はいなくならないって!』
ああ、したよ。その約束。
『もう一人ぼっちはイヤだよぉ……大切な人を失う悲しみなんて、もう2度と味わいたくない……』
楓南の悲痛の声に、俺は胸が締め付けられた。
……ごめん、楓南。
今から行くよ。
俺は絶対に楓南の傍からいなくならない。
そう、約束したもんな?
暗闇の中、わずかに差し込む光。
俺は楓南に会うため、そこへ向かった。