鈍色、のちに天色




俺のことが心配だと言ってくれて嬉しいけど。



でもさ、楓南。

俺が楓南を置いて死ぬわけねーじゃん。



約束したってこともあるけど、それ以上に俺が楓南の傍にいたいんだ。



だから離れることなんて、しねーよ?



俺は楓南が落ち着くまで、黙って頭を撫でていた。






幸いにも、俺は脳震盪と軽い擦り傷程度だった。


何時間も眠っていたのは、ショックからだったらしい。



念のため1日入院したあと、無事退院することができた。



楓南と並んで病院を出る。




「まったくもうっ。2度と事故とか、やめてよね!」


「はいはい、わかってますぅー」


「ちょっと! 真面目に!」




昨日から楓南はずーっとこんな感じ。


めちゃくちゃ不安にさせたんだなって反省したけど、いい加減同じことを繰り返すのはやめてほしい。



グチグチ文句を言う楓南の頬をつねった。




「いふぁい! ふぁにふんのっ!」


「あのな、よーく考えてみろよ? 俺がそう簡単に死ぬと思うか?」


「ふぉふぇは……」




真剣な顔になったのに頬をつねったままで、思わず笑いそうになったけど、急いで手を離した。



< 196 / 226 >

この作品をシェア

pagetop