鈍色、のちに天色
「俺さー、陸上は好きなんだけど、それ以外はからっきしで……めちゃくちゃケガするんだよなー」
「へぇ、そうなんだ……。陸上、何やってるの?」
初めて、あたしから質問した。
三上くんもそれに気づいたのか、目を輝かせた。
「駅伝! 俺、駅伝やってるんだ!」
「えき、でん……」
”track and field club”という文字を見つけたときのように、ドクン、と心臓が大きく鳴った。
……あたしと、同じ。
かつてのあたしと同じ種目をやっているんだ、三上くんは。
偶然なのか、必然なのか。
……ただの偶然に決まっている。
「駅伝、キツイけど楽しいんだよなー。特に、バトン渡されたときとか、ゴールテープを切るときとか、好き」
……知ってる、駅伝の楽しさは。
あたしはよく知ってるよ。
三上くんの顔を見ると、駅伝が本当に好きなんだなーって伝わってくる。
頑張ってほしい、あたしの分まで。
もう走るどころか、歩くことのできないあたしの分まで。
過去の感覚が蘇ってくるのを、必死に抑え込んだ。