鈍色、のちに天色




陽希の言葉を思い出していると、スマホからしんみりとした声が聞こえてきた。




『なんかさぁ、今までのこと思い出しちった』



「今までのこと?」



『そ。俺、中学のときから駅伝に尽くして、高校でも頑張って。でも、練習はキツいし、スランプになったときはやっぱりめっちゃ悩んだりしてさ』




その気持ち、よくわかる。


あたしも経験あるから。




『でもやっぱり嫌いになんかなれなかったんだよなー。俺、駅伝バカだから! へへっ』



「あはは、それ自分で言っちゃう? ま、あたしもそうだけどっ」




2人揃って、駅伝バカだね。




『それに、駅伝は俺と楓南が出会うきっかけも作ってくれたしなー。感謝しねーとなっ』



「駅伝に感謝って……ふふ、なにそれ」




でも……そうだね。


あたしたちどちらかが駅伝をやっていなかったら、こうして今話していることもなかったかもしれない。



出会いって、本当に奇跡みたいなもの。



だから大切にしようって思えるんだ。



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