鈍色、のちに天色
……あたし、陽希のその笑顔が大好き。
その笑顔が見たかったんだ。
「すごいっ……すごいよ、陽希……っ」
再び涙が感情を支配する。
ごめんね、
本当はもっと言いたいことあるのに、言葉が上手くまとまって口から出てくれない。
ありきたりな言葉しか言えないの。
……言えないなら、行動で示せばいい。
あたしの中の何かがそう言った。
それに突き動かされるように、ゆっくり陽希に近づいていって抱き締めた。
「お、おい……楓南? 俺、汗くせーぞ!?」
「全然へーき」
一生懸命走って火照った体。
ちょっぴり鼻腔をくすぐる汗の匂い。
それがあたしにとっては心地よかった。