鈍色、のちに天色
「……俺たちって、いろんなことがあったよな。
中学のとき、楓南の走りを見て憧れて、1回だけだけど話してピンも貸してもらって。でも、楓南は覚えてなくてさ」
「うん……それは申し訳ない……」
「いや、俺が勝手にドキドキしてただけだからさ。……それで、高校で再会して近づいて突き放されての繰り返し。
でも、今はこんなに近くにいる」
誰よりも、近くに。
”かけがえのない存在”だよ。
「助け合ってきたな、俺たち」
「うん」
「いろいろ乗り越えてきたな」
「うん」
「本当、感謝ばっかだよ」
「うんっ……」
やわらかくて優しい表情に、ドキドキすると同時になぜかあたしの涙腺は緩む。
そして……。
「俺さ、中学のときからずっと、楓南のことが好きだよ」
その言葉を聞いて、熱い涙は溢れた。
そしてそれは止まることを知らない。
真剣な眼差し。
でもどこか照れを含んだ表情。
見れば本気だとわかる言葉。
それがあたしの胸に刺さり、一気に幸せにさせる。