鈍色、のちに天色
「ねえ、陽希。”楓”の花言葉って知ってる?」
「楓? いや、知らねーけど……どうした、急に」
「ほら、あたしの名前って”楓”って字が入ってるじゃん? 昔、お母さんに教えてもらったことを思い出したんだけど……」
ふと目を瞑り、そのときのことを思い出す。
思い出したとき、運命だって。
本気で思ったんだ。
「”楓”の花言葉は”大切な思い出”。それと──”美しい変化”」
「大切な思い出と、美しい変化?」
「そう」
ふふ、と微笑み陽希を見た。
不思議そうな顔をして、首を傾げている。
まったく、わかってないなぁー。
「朋也との過去は、”大切な思い出”。そして、陽希との出会いであたしの中で起きたのが、”美しい変化”」
「っ!」
「だからあたし、この字はすごく大事なんだ。この字の意味を、朋也と陽希が作ってくれたと思ってるから」
大事な2人が作ってくれたもの。
「あたしにピッタリの名前だと思わない?」
「ああ……そうだなっ」
頷いて笑った陽希を見て、あたしも同じように笑う。
そしてその隣に寝転んだ。