鈍色、のちに天色
あたし、本当に恵まれてるよね。
こうして隣に陽希がいて、親友の紗彩がいて、温かい家族がいて。
そして、こうして生きている。
風を感じて、毎日楽しく過ごして。
感謝すべきことがたくさんある。
空を悠々と泳ぐ鳥。
昔は、自由で大きく飛ぶその姿が羨ましくてたまらなかったけど。
でも今は誰にも負けないくらい幸せ。
そう言い切れるよ。
「なあ、楓南」
「ん?」
肩を叩かれ、横を向く。
陽希と目が合う……と思いきや、額に当たる柔らかい感触。
顔が離れたと思ったら、陽希はにぃっと笑って。
「俺、すげー楓南のこと好きだ!」
そう言われた。
ハッと我に返り、額に手を当てる。
お、おでこに……チューされたっ!!
しかも、そんなどストレートな言葉……
やっぱり、陽希は陽希だね。
「……あたしも、陽希のことすっごく好き」
本当に、大好きなんだよ。
この気持ち、届いてる?
少しでも多く、届いて。
頬を赤く染めるあたしを見て、陽希も照れくさそうに笑った。