鈍色、のちに天色
「あのさぁ……ひとつ聞いてもいいか?」
「え…うん。いいけど……」
何か迷っているような表情。
珍しい表情に戸惑うけど、頷いた。
まっすぐな瞳が、あたしを写す。
「上野って昔、陸上やってただろ? ”北中学の女子駅伝チームのエース、上野 楓南”だろ?」
────ドクンッ。
三上くんの質問に、あたしの心臓は大きく跳ね上がった。
なんで、なんで知ってるの……?
そのことは隠していこうって、誰にも言わないようにしようって思ってたのに、
どーして……?
すると、あたしの心を見透かしてか。
「楓南のこと、大会で何度か見たことがあるんだ。全国大会まで出て有名だったし」
ああ、なるほど……。
三上くんは中学のときも陸上部で、しかもあたしと同じ種目。
自分で言うのもアレだけど、駅伝の成績も良くて、けっこう良いところまで進んでいった。
だからあたしのことを知っていたのか。
だから”三上 陽希”って名前になんとなく聞き覚えがあったし、見たことある気がしたんだ。
まあ…もともと知っていたのならしょうがない。
今さら隠したって無駄だよね。