鈍色、のちに天色
新しい学校生活。
普通なら期待と不安を胸に、新境地に足を踏み入れるだろう。
だけどあたしは、なんの感情もない。
ただ、友達なんていらない。
恋人はもっといらない。
大切な人をこれ以上作ったらダメだ。
心に言い聞かせる。
「……よし、行こう」
そろそろ校舎に入らないと、と思いタイヤに触れたとき。
「やべえ、遅刻だ……っ!」
あたしの横を駆け抜ける、1つの影。
それは1度あたしを抜かし、でもズズズー……と急に足にブレーキをかけ、あたしを振り返った。
うわ、カッコイイ人……。
思わずそう思ってしまう、風貌。
日に焼けたのか、少し茶色くなっている短めの髪。
健康的な小麦色の肌。
スラッとしてて細身なのに、しっかりとついた筋肉。
いわゆる、めちゃくちゃ端正な顔立ちってわけじゃないけど、かなりのイケメン。
モテるだろうなって、客観的に思った。
それよりも、どこかで会ったことある……?
……気のせいかな。