鈍色、のちに天色
「あの、助けてくれてありがと」
お礼を言えば、「いーえっ」と言って微笑んでくれた。
濡れてしまったブレザーを脱ぐ。
よかった、中のYシャツはそこまで濡れてない。
「あっ! 上野ケガしてる!」
「え?」
三上くんに言われて、初めて気がついた。
膝からは鮮明の赤い血が出ていた。
きっと、さっき車椅子ごと倒れたときだ……。
「俺、救急セット持ってんだ! 手当てするよ」
救急セット持ってるとか、女子力高っ。
そう思ったけど、三上くんが陸上以外苦手で、よくケガすることを思い出した。
あぁ……そのための、救急セットね。
納得していると、あたしの前にひざまずく三上くん。
まじまじと足を見られて、恥ずかしさで思わず身をよじる。
でもどーせあたしは立てないし、せっかく三上くんが手当てしてくれてるから、我慢した。