鈍色、のちに天色
真剣な顔でケガの手当てをする三上くんを、ぼーっと見ながら考えていた。
「あのね、あたし……」
ねえ、なんでだろう?
あたし今、なぜか過去を話そうしてる。
でも、三上くんにならいいかなって、そう思えた。
過去の記憶を、呼び起こした。
「……あたし、好きな人がいたんだよね」
ピクッと揺れる三上くんの肩。
でも三上くんは足の手当てを続けて、あまり顔が見えなかった。
聞いてないかもしれない。
でも、それでも構わない。
あたしが勝手に話したいだけだから。
「その好きな人っていうのはね、幼なじみなんだ。朋也っていうんだけど……どちらかというと控えめで、でも心優しい人だった」
活発で走り回るあたしを笑って見守る、そんな人だった。
大好きだった、朋也のおおらかな雰囲気が。
大好きだった、優しく微笑むその笑顔が。
大好きだった、あたしのことを1番に考えてくれてるところが。
あたしたちは付き合っていたわけじゃない。
だけどあたしたちの想いは繋がっていた。
自惚れって言われるかもしれないけど、そう思っていたんだ。