鈍色、のちに天色




いつの間にか緩んでいた頬。


それは一瞬にしてなくなった。




「でも、朋也は死んだ。あたしのせいで」



一生忘れない、あのときの光景は。




「中学2年の冬。今日みたいに、雨の日だった。朋也を買い物に連れ回した帰り、あたしが飛び出しちゃったんだよね。すごい勢いで走ってくるトラックに気づかなくて」




傘を回して、青を点滅させている信号を渡ろうと、駆け出した。



『楓南っ!!』



後ろから焦ったように、あたしの名前を呼ぶ声。


横からすごい勢いで走ってくる大型トラック。



そのとき、すべてがスローモーションに見えた。


目をぎゅっとつぶり、体……主に足に鈍い痛みが走った。


目を開けて自分の足を見て、悲鳴をあげた。


血だらけで、動かそうとしても動かなかったから。



でも……

少し視線をズラすと、冷たく濡れた地べたに倒れる朋也が視界に入ってきた。



朋也の周りは血の海。


ピクリとも動かない朋也を見て、あたしは察した。



朋也はあたしをかばったんだ……

あたしをかばって、こんなことに……。



< 45 / 226 >

この作品をシェア

pagetop