鈍色、のちに天色
痛い足を引きずって、朋也に近づく。
『朋也っ……朋也!!』
体を揺すって名前を呼ぶと、朋也はうっすらと目を開けた。
そうして言ったんだ。
『かなん、は……ぶじ?』って。
こんなときまであたしの心配をして、どんだけお人好しなのって、涙がボロボロと溢れてきた。
救急車と呼ばなきゃ。
そう思っても、体は思うように動かないし、そもそも手元にスマホがなかった。
周りの人は哀れみの目を向けるだけで、何もしない人がほとんどだった。
誰も助けてくれない。
なんなの……なんなのよぉ……。
なんで誰も助けてくれないの?
人間はこんなにも、残酷な生き物なの?
でも。
朋也をこんな目に合わせたのは、紛れもなくあたし。
だから誰も責めることができなかった。
自分自身を責めるしかなかった。
しきりなく雨が降り注ぐ中、倒れる朋也と泣き叫ぶあたし。
冷たく悲しい雨は、止むことを知らなかった。