鈍色、のちに天色




彼の温かさや優しさが、心に染み込む。


傷だらけだった心が少しだけ、でも確実に修復していくのがわかった。



このとき、あたしは朋也が死んでから、初めて思いっきり泣いた。

我慢しないで、思いっきり。



そしてなぜか、彼も一緒になって泣いてくれた。





────ねえ。あたし、今まで頑張ってきたかな?


少しだけでも、幸せを感じてもいいのかな?


差し伸べてくれた彼の手に、そっと手を重ねてもいいですか?



あの日は止むことのなかった雨。


今日は綺麗に雨が上がり、雲間から覗く太陽の白くて優しい光が、あたしたちを包み込む。



鈍色から天色(あまいろ)に染まる空の下で、小さな幸せを感じた────。







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