鈍色、のちに天色




「上野っ! どう? なんか直したほうがいいとこ、ある?」



「うーん……もうちょっとリズムよく走ったほうがいいと思う。
駅伝は、人についていくっていうよりも、自分のペースで走ることが大事だから」



「なるほどなぁ……リズムよく、自分のペースで……他には?」

「もうない」


「えー、そんなこと言わないで! 他にはないのかよー?」


「せがまれたって、ないものはない。ていうか、ないほうがいいじゃん」


「まあ、そうだけどー」




なんでそんなに不満そうなの。




「じゃあ、俺また走ってくるから! そんで直したほうがいいとこ、見つけて! ちゃんと見てろよ?」




そう言ってまた駆けていった。



”ちゃんと見てろよ?”

そう言われて、なぜかちょっと胸がドキッと鳴った。



……いやいや、ドキッとしてる場合じゃないって!



そんなに、直したほうがいいとこ見つけてほしいのかな?



でも、本当に見つからないくらいの実力なんだよ。



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