鈍色、のちに天色
それからいつもの空気に戻り他愛もない話をし始め、夕食の時間だとお母さんが声をかけてきて、紗彩は立ち上がった。
「じゃあウチ、そろそろ帰るわ」
「え、ご飯食べて行けばいいのに」
「気持ちは嬉しいけど、たぶんもう飯作ってあんだ。また今度ご馳走になるよ」
「そっか、わかった。今日はありがとね」
「いや、ウチも会いたかったからさ。よかったよ、楓南の顔見れて」
紗彩と2人で玄関に行くと、ちょうど部活から帰ってきた南那と会った。
南那はバレー部で、いつも遅い時間までやっている。
もう3年生で、引退の時期が近づいているから特に。
「おー、南那! 久しぶりじゃん!」
「……紗彩ちゃん」
もちろん、紗彩と南那は面識がある。
昔は仲良くてよく3人で遊んでいたんだけど、あたしがこうなってからは……
避けられている。
「どうよ? バレー部のほうは頑張ってんのか? あ、あと今年受験だろ? どこ受けるんだよ?」
親しげに南那に肩を組む紗彩だけど、南那はそれを振り払う。
「別に、関係ないでしょ」
「なんだよ、素っ気ないな~」