鈍色、のちに天色
「相変わらず運動音痴だね、三上くんは」
「うるせー。そこも含めて、俺のいいとこだろっ?」
「あはは。それはない」
「えー」
傷口に入った砂を取り除きながら、そんな会話をする。
痛くないか聞くと、ケガをしすぎて慣れた、だそう。
それもそうだね、と笑う。
自分が誰かと普通に会話して、誰かと笑い合っていることに我に返った。
南那のことを置いて、自分が笑っているなんて。
あたしはそっとため息をついた。
それに気づいたのだろう。
三上くんは口を閉じ、必然的に静かになる保健室。
あ…まずい。
人前でため息をついちゃうなんて、失礼にも程がある。
「ご、ごめん…変な意味はなくて……」
そう言って顔を上げると、三上くんは真剣な顔をして、そして心配そうにあたしを見ていた。
想像とは違った表情に、少し戸惑った。
三上くんは、ゆっくりと口を開いた。
「あのさ、上野。なんか無理してること、ある?」
「え?」
なんで、そんなこと……。
「前よりは心開いてくれたけど、俺、全然上野のこと助けられてない。まだ、悩んでることがあるんだろ?」
あるよ。
最近は特に南那のこと、かな……?
「俺、言ったじゃん? 受け止めるって。無理にとは言わないけど、俺のこと頼ってほしい」