鈍色、のちに天色
「……つーかさ、」
「ん?」
「俺、上野の母さんにタンカ切っちゃったけど、大丈夫かな!?」
「ああ、あれね……。お母さん、めちゃくちゃ怒ってたよ」
「やっぱり!? やべー、どうしよう……」
「……ぷっ、あはは。ウソウソ。むしろ感謝してたから気にしないで」
「ウソって……はぁ?」
つい、三上くんが面白くて。
「もぉ……驚かすなよ」
「ふふ、ごめんごめん」
そーだ、あたし陽希に言いたいことがあるんだよね。
頭を抱える陽希に、思い出したことを話す。
「あのさっ……”上野”じゃなくて、”楓南”って呼んで。……さっきは、呼んでくれたでしょ?」
「っ……!」
聞き逃してなかったよ。
さっきお母さんに話してくれてたとき、"楓南"って呼んでくれてたの。
それがたとえ、何の意味も含んでいなくても。
あたしの心は嬉しくて、そしてなぜか、ドキドキしたんだ。
「……バレてたか」
「うん、聞き逃さなかった」
「まじかー……」
照れくさそうに顔を隠す三上くんは、今まで見たことがなくて、あたしまで恥ずかしくなった。