旅人と老人
老人は少年の顔をまじまじと眺めます。
恋人の居るような歳ではない。
兄弟は居るのだろうか?
「兄弟は居るのかい?」
「いいえ、僕には家族が居ません。」
平然とそう答える少年に、老人は少し戸惑います。
「では両親も居ないのかい?」
「はい。生まれた時から色々な家を転々としていました」
「故郷は?」
「分かりません。最後に居た家は北の方にありました」
老人は、なぜこんなに小さな少年が旅などしているのか、なんとなく分かった気がしました。