旅人と老人

老人はうんうんと小さく頷き、掠れた声で泣きました。


「寂しい、寂しい」


老人は訪れる人を、今までただの一度も拒みませんでした。

優しく受け入れ、温かい食事を与えました。

いつも旅人の話を聞くのは、人の温かさに触れたかったから。


老人は搾り出すように声を出し、その小さな旅人に問います。


「君は、なぜ旅をしている」


少年の目からは、また新たな涙が溢れました。


「寂しかったからです。居場所が欲しかったんです……」
< 46 / 52 >

この作品をシェア

pagetop