【完】恋愛モノポリスト
…本当は、自分も怖いのだけれど…。
まさか、自分の身にこんなドラマみたいな出来事が起こるだなんて思いもしなくて。
心が悲鳴を上げそうだ。
ピコン、ピコン…
親父の心拍数を知らせる音だけがこの耳に響く。
こんな時、俺がもっと強かったら、大人だったら…と切に思う。
何事からも逃げずに、真っ向から立ち向かえるくらい強かったら…良かったのに。
「…っ母さん、親父の傍、いてあげて。俺、少し外の空気吸ってくる」
「…凌太…」
「…そんな顔しないで?大丈夫。親父は大丈夫だから…」
今にも泣き出しそうな顔を母さんには見せたくなくて、俺は後ろ手でそうひらひらとわざと明るいフリをして、母さんに言うと病室を後にした。