【完】恋愛モノポリスト
「…ななに、逢いたい…」
冷たい風が吹き荒れる病院の屋上で、俺はしゃがみ込んでななの名前を呼んだ。
こんな所じゃ、余計に届くはずなんてなくて、ぎゅうっと両膝を体に引き寄せた。
「…っ逢いたい…っ。逢いたいよ…っ」
知らない土地での心細さと、これからへの不安さで、俺は子供のようにボロボロと涙を零した。
男の癖に情けないとは思いながらも。
…あんな事をしてしまったから、ななはもう俺の事なんか好きでもなんでもない…。
幼馴染としてのキズナも俺から壊してしまった。
徐にスマホをポケットから取り出すと、メールアプリを開く。
ななからのメールは何時だって素っ気無いのに、どこか可愛くて憎めなくて…。
無理やり一緒に撮った写メは、綾乃ちゃんと仁の間に挟まれて真っ赤なななと嬉しそうな俺が映ってる。
それを指で軽くなぞってから、俺は思った。
この頃に戻れたなら…。
あんな風に泣かさずに済んだのに。
あんな風に苦しそうな顔をさせずに済んだのに。