【完】恋愛モノポリスト
元々、大学へは行かずに留学しようかと考えてたんだ。
高校に入ってからすぐくらいに。
ななが、どんどん自分から離れて行く事が辛くて、逃げようとしてたんだ。
でも、今は違う。
日本へ戻ろう。
そして、ななにちゃんと気持ちを伝えよう。
今までの拗れた状況も全部曝け出そう。
それで、フラれたら。
きっぱり諦めて、ちゃんとした目標を持って親父の元へ帰ろう。
親父の仕事を手伝うという目標を持って…。
「凌太、気を付けるのよ?」
「大丈夫だよ、母さん。心配すんなって」
「リョータ、…待っているよ」
「…うん。アンディ、母さんと親父の事よろしくな?」
「OK。任せて。じゃあ、空港まで送っていくよ。車へ乗って」
車内は、軽快なラジオの音楽だけが響いてた。
誰も口をきかない。
でも、想いは同じなような気がしていた。
空港に着くと、不安げな母さんが俺の手をぎゅうっと握って来た。
それを優しく握り返して、俺は微笑む。
「大丈夫。大丈夫だよ、母さん。俺、必ずこっちに帰ってくるから…な?」
「そう、ね。凌太はもう子供じゃないんだものね」
余程心細いのか、母さんの手は震えていた。
俺はアンディに視線を投げて、そっと母さんをエスコートしてもらう。
「じゃあ、行くから…」
「えぇ…本当に気をつけて…向こうへ付いたら、アンディにでいいから連絡頂戴ね?」
「分かった」
「リョータ…」
「うん。大丈夫。もう、覚悟決めたから」
そんな俺達に、フライトのアナウンスが響いた。
それをきっかけに、俺は搭乗口を目指して歩き出した。
…真っ直ぐに、前を見て。