【完】恋愛モノポリスト
「…な、な…?」
そこには、俺の部屋を泣き出しそうな顔をして見つめているななが、いた。
急な展開に、頭が付いていかない。
だって、まだ登校するには時間が早過ぎるし…俺が日本へ戻る事は担任以外には伝わってないはずだったから。
俺は、急いで窓を開ける。
もしかしたら、まだ夢の途中で、そこにいるのはただの幻かもしれないと思ったんだ。
「なな?」
声を掛けると、ななは俺を見つめたまま、何かを言おうとしてる。
「ま、待って!今、すぐ行く!」
ダダダッと階段を下りて、勢いよくドアを開くと、やっぱりそこには生身のななが立っていて。
夢じゃないんだと…そう安心した瞬間。
「りょーた!」
わっと泣き出して、ななが俺に抱きついてくる。
俺は、まだこの展開に思考がついていかなくて、バカみたいにおろおろするばかり。
「なな!どうして?こんなに冷たくなって…いつから、ここにいたの?って言うか、俺がここにいるって何で知ったの?」
「…っ…わたし…っ…」
「泣かないで?泣かないでよ、なな」
「…りょーたがいなくなって…どうしようかって…思っ…て…っ」
「うん。ごめんね?ちゃんと、言わなくてごめん。なんか、色々ななには謝らなくちゃいけない事だらけだな…」
冷たいままのななの体を抱き締めて、俺はぽんぽんとななの頭を撫でてなんとか泣き止ませようとする。
暫くすると、ななは落ち着いてきたのか、すんすんと鼻をすするも零れた涙の残りを指で拭って、俺の方をジッと見つめてきた。
「なな、あのさ…俺」
「…すき…」
「…え……」
「わたし、りょーたがすきだよ…っ…」
「…なな?」
「りょーたがいなくなって、初めて気が付いたの。私にはりょーたが必要なんだって…ごめん。ごめんね…っりょーた…」
ぎゅううっと抱き締められて、俺は困惑した。
だって、こんなに都合にいい事があるんだろうか?
「ほん、とに…?」
「こんな気持ちになったの、初めて、だから…っ全然気付けなくて…いっぱいりょーたの事傷つけた…私…」
「…いいよ…そんなこと。…でも…その…ほんとに、俺の事好きな、の?」
「嘘だ、なんて言わないで…っ!私もどうしていいのか分からないんだから…」
そして、背中に回された腕にもう一度力が込められる。
俺は、くらりと眩暈がしそうだった。