【完】恋愛モノポリスト
ななが、自分を好きだと言ってくれている。
それだけでも、嬉しいのに。
「もう、急にどこかに行ったりしないで!私の事、置いていかないで!」
そんな風に必要とされてしまったら、薄っぺらい理性なんて、一気に飛んでしまうから。
「りょーた…すき…だいすき…す、き…ん…」
「…っ。俺も、大好きだよ…なな…」
「りょ、た…っ」
俺のキスを、戸惑いながらも受け止めてくれるなな。
俺は、とん、と自分の家のドアにななを縫い止めてその甘い口唇を貪った。
「好き、だ…」
「私も…」
「なな…少し、話せる?ここじゃ、寒いから…」
「ん…」
俺は、ななの涙の溜まった瞳を指で優しくなぞってから、そう言って家の中に招いた。
すぐに家中のエアコンのスイッチを入れて、ななの体を温める為に熱めのココアを淹れてあげる。
それを手渡すと、テーブルを挟んで、ななに切り出した。
「折角…折角、ななが好きだって…必要だって言ってくれたのに…ごめん」
「…え?」
「まだ、担任にしか話してないんだけど…俺、留学する、よ。親父が…怪我して、それで…」
「ひどい、の…?」
「…うん。麻痺が残るかもしれない。だから、出来るだけ親父のフォロー、してやりたいんだ。今まで離れてた分…」
「……」
「……」
気まずい沈黙が何秒流れただろうか。
ななは、暫く俯いたままだったけれど、寂しそうな笑顔でこう言って来た。